漢方薬の最大のメリットは、症状を緩和することに加え、原因となった要因に働きかけて症状が出ない体質に改善することでです。
もちろん、生薬といった自然由来の成分を使っているという体への負担が少ないのは言うまでもありません。
なぜ西洋薬でなく漢方薬を選ぶ人が伸びているかというと、次の一言に尽きるのではないでしょうか。
症状が出ないように体質改善したい!
お悩みの症状を改善するだけでなく、その他気になっている他の症状も一気に改善したい、そしてもうそうならない体を作りたい、そんなことができたらうれしいですよね。
このような漢方薬を求めている人たちは、右肩上がりで増えているのもわかります。
※漢方製剤の生産金額は、厚生労働省の2017年統計調査において前年比6%増。
このことから、単に特定の症状に効く表示があるかどうかで漢方薬を選定するのではなく、服用する人の今の体質を見極め、その上で症状が出づらい体質に改善していけるものを選ぶことが重要になってきます。
西洋医学と東洋医学
さて、一人ひとりの体質はあまり考慮せず、症状に合わせてお薬を決めるというのは、西洋医学の考え方であり、東洋医学を根拠にする漢方薬は、必ずしも「症状=薬」ではありません。
同病異治
同病異治をご存知ですか。
これは、「同じ病気でも、異なる治療を行う。」という東洋医学の教えです。この教えに沿えば、同じ病気に悩む患者さんは、一律に同じ漢方薬を使うということはありません。
漢方治療は、表面上の病気を治療するというよりも、その人特有の病気に至った原因を分析し、その原因を取り除くという発想で根本治療を進めるからです。
この病気からこの漢方薬!と決め付けずに、まずは病気に至った原因を探ることが大切になってきます。
ただ、原因を把握するというのはとても難しいことです。病気になった時期は何となく覚えていたとしても、ここ数ヶ月間の食事内容、運動で消費したカロリー、睡眠の質などは覚えている方は少ないでしょう。
体質から原因を探る
そこで、原因を探る有効な手段として用いるのが、今の自分の体質を知るということです。体質や気質のことを東洋医学では、証(しょう)と呼んでいます。
体質は、私たちの過去の生活習慣の積み重ねからできていますので、ある時点の体質を見出すことで、その病気に至った原因をも読み取ることができるのです。
現在の状況から、過去の原因を見出すのです。
はじめに、体質の決め手となる4つの重要な要素を確認しておきます。
- 気(き)
- 血(けつ)
- 水(すい)
- 精(せい)
これらは、お互いに調整し合いながら体内をバランスよく流れています。しかし、多くなったり少なくなったりしてバランスが崩れはじめると、それが歪みとなり病気になっていきます。
症状や病状は、4つの要素のいずれか又は複数が歪んだ状態になっていることが引き金になっていると考えます。
体質を8つに分類
この歪んだ状態を、8つの体質に分類します。
4つの要素(気・血・水・精)が不足している状態で、それぞれ次の4つに分類します。
- 気虚(ききょ) ・・・気が不足している状態
- 血虚(けっきょ)・・・血が不足している状態
- 陰虚(いんきょ)・・・水が不足している状態
- 陽虚(ようきょ)・・・精が不足している状態
4つの要素(気・血・水・精)が多過ぎたり停滞していたりする状態を、4つに分類します。
- 気滞(きたい) ・・・気が停滞している状態
- 血瘀(けつお) ・・・血が停滞している状態
- 湿痰(しったん)・・・水が停滞している状態
- 湿熱(しつねつ)・・・精が停滞している状態
体質を誤ると副作用の心配
なお、体質に合わない漢方薬を服用すると、効かないどころか、副作用を起こす可能性があるので注意が必要です。
また、体質は一つとは限らず複数が同時に現れることがあります。また時間の経過とともに、体質は変化していきますので、漢方薬も体質の変化に合わせて変えていく必要があります。
ここで、体質ごとの漢方薬の使い方を簡単に説明します。
例えば、気が不足している「気虚」と診断された場合は、気を補う漢方薬を用います。水が滞っている「湿痰」の場合は、水を循環させる漢方薬を用います。結果として、それらの原因が取り除かれ、様々なお悩みが解決していくというものです。
根本を狙った治療を行えば、そこから派生した様々な症状をも、同時に治療できるのです。
体質の詳細については、こちらのページを参考にしてください。
漢方薬を服用する最大の目的は、症状が出ないように体質を改善することにあります。
間違っても、現在ある症状だけを治療するというものではありません‼
漢方薬の服用による治療は、少々時間はかかることがりますが、あなたの健康ライフの味方にきっとなってくれると思います。