体質とは、生まれながらに持っている又は生活習慣から起こる体の性質を指します。東洋医学(漢方)では証(しょう)ともいい、生命維持に必要な成分である「気・血・水・精」の過不足やバランス、臓器の状態などを考慮して体質を判断します。
このページでは、東洋医学に基づいて、健康的な体質とは何か、そうでない8つの体質とは何か、そしてそれらの改善方法についてやさしく説明します。
ただ、一般的な知識を得たとしても、「あなた自身への答え」が分からなければあまり意味がありません。
そこで、うち漢方の体質判定システムをお試しいただきながら、あなた自身への答えが分かるようにご案内していきます。
(目次)
1 体質の概要
2 体質の種類
- 気滞体質
・主な症状・病気
・おすすめの改善方法 - 気虚体質
・主な症状・病気
・おすすめの改善方法 - 血瘀体質
・主な症状・病気
・おすすめの改善方法 - 血虚体質
・主な症状・病気
・おすすめの改善方法 - 湿痰体質
・主な症状・病気
・おすすめの改善方法 - 陰虚体質
・主な症状・病気
・おすすめの改善方法 - 湿熱体質
・主な症状・病気
・おすすめの改善方法 - 陽虚体質
・主な症状・病気
・おすすめの改善方法
3 まとめ
体質の概要
健康な体質とは
健康な体質とはどんなものでしょうか。
東洋医学では、「気・血・水・精」が過不足なくバランスよく存在し、体内を滞ることなく循環している状態を、健康な体質としています。この体質のことを、「中庸(ちゅうよう)」といいます。中庸体質が、目標とする健康体質と言えます。
さて、そもそも体質はどのように形成されるのでしょうか。
一つは、生まれ持っての性質です。もう一つは、生後に形成されたもので、食生活やハードワークによる過労そして感情の起伏などが原因でできた性質です。これらが合わさって体質が形成されます。
なお、気力と体力が十分に備わっていれば、ご自身が持つ自然治癒力によってバランスを取り戻すことができますが、自然治癒力が弱かったり偏った生活が長く続いたりすれば復元が困難になっていきます。
それが進むと、病気になっていきます。
病気になってから体質を改善しようとすると、とても時間がかかってしまいます。
できれば、病気が初期の状態、望ましいのは病気が発生する前(漢方では未病と言います。)に偏った体質を確認できれば、体質に合った改善方法を実践いただきながら、生活習慣を見直すなどしてバランスを取り戻すことが可能になります。
なお、生粋の体質や長い期間の偏った体質を改善しようとする場合は、漢方薬を一定期間服用するなど時間をかけて体質改善を図ることをおすすめします。
基礎となる4成分
ここからは、少し専門的なお話になりますが、できるだけわかりやすい表現に努めていきます。まずは、体質の要素となる成分のお話です。
生命の営みを維持するためには、食べものや空気などを外部から取込む必要があります。それを媒介するものが、「気(き)・血(けつ)・水(すい)・精(せい)」の4成分です。これらがバランス良く体の内外で交換することで、人は生命の恒常性を維持しています。
「気」は生命エネルギー
気は、大気中の酸素と大地から得られる栄養素から作られます。運動する筋肉や思考する大脳、血液を循環させる心臓など生命を営む働きは、すべて気によって行なわれています。
「血」は血液
血は、気と精が協力して骨髄などで作られます。全身の細胞に酸素と栄養分を送り込み、さらに二酸化炭素と老廃物を回収します。二酸化炭素は肺で大気中に、老廃物は大便として排出されます。
「水」は体液
水は、血液以外の体液で細胞内液も含みます。リンパ液や組織間液、脳脊髄液、関節腔液としての水は、皮膚や粘膜、結合組織を潤します。細胞内液としての水は、内臓や器官などの細胞を潤します。不要な水は、尿として排泄されます。
「精」はホルモン
精は、気と血が協力して脳下垂体や副腎、生殖器などで作られます。成長や代謝、生殖など生命活動を維持調整しています。
8つの体質
体質は、「気・血・水・精」の過不足や滞りとバランスを分析して、判定することになります。
その結果として、次の8体質に分類します。
- 気滞(きたい)体を動かす気が充満し停滞している体質です。
- 気虚(ききょ)体を動かす気が不足した体質です。
- 血瘀(けつお)体の老廃物を運ぶ血の流れが悪く、全身または部分的に血が余剰して停滞している体質です。
- 血虚(けっきょ)体に酸素と栄養分を供給する血が不足した体質です。
- 湿痰(しったん)体を潤す水が過剰となり、湿や痰が停滞している体質です。
- 陰虚(いんきょ)体を潤しそれらの働きを円滑にする水が不足して、皮膚や筋肉、神経、内臓などの細胞の働きが低下した体質です。
- 湿熱(しつねつ)体を維持成長させる精が過剰にあり、湿と熱が停滞している体質です。
- 陽虚(ようきょ)体を維持成長させる原動力となる精が不足して、身体の動きや精神活動が低下した体質です。
体質については、次の動画で私が詳しく解説しています。お時間のあるときにご覧いただければ、深いところでご理解いただけるかと思います。なお、動画では、体質のことを証と表現しています。
体質の判定方法
ご自分の体質を知る一番よい方法は、東洋医学(漢方)を専門にしている医療機関の医師、漢方薬局の薬剤師(登録販売者)、鍼灸治療院の鍼灸師などに、問診や脈診などをしてもらうのがよろしいかと思います。
しかし、体質判定だけをお願いできる先生は、なかなかいらっしゃらないでしょう。
そこで、私たちが運営しているうち漢方の体質判定システムをおすすめします。当てはまる項目をチェックするだけで体質判定ができますので、ぜひやってみてください。
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漢方薬の選定に必要なこと
体質が分かったら、それを改善するための漢方薬を服用したくなるかもしれません。
ただ、ここで注意が必要です。漢方薬は、病名や症状だけで決めるのではなく、その人の持つ根本的な原因を見出し治療していくことを本意にしているので、現にある症状だけでなく、その人の体質に合った(その体質を改善するための)漢方薬を選ぶ必要があります。
漢方薬は、自然の生薬から構成されたものですが、薬であることに注意する必要があります。当然のことですが、体質に合わない漢方薬を服用すると副作用の恐れがあります。
漢方薬の選定する際は、安易にラベルだけで決めないでください。
体質は複数
また、これまで診てきた患者さんを例にすると、通常2~3の体質を併せ持っている方が多いです。
例えば、「気滞と湿熱」の体質が共存している例です。気滞の特徴であるイライラ感と湿熱の熱感が相まって、ストレス時の異常発汗が増強されることがあります。「気滞と陰虚」が共存する場合は、精神的な症状が増強され感情が激しくなります。
「気滞と気虚」が共存して、躁鬱的な状態を示すこともあります。
「血瘀と血虚」が共存する場合は、頭部では血が停滞し下肢では血が不足するように身体の部分で違った状態を示します。
さらに病気の進行に伴って、体質が変化していくこともよく起こります。
例えば、「気滞と湿熱」の体質が共存している方は、イライラ熱感と異常発汗が長期間続くことで、体液を消耗して水が不足した陰虚の体質に傾いていくことがあります。
「湿痰」の体質の方が風邪を引き発熱して、咽頭や気管の炎症が長引き「湿熱」の体質に変化することもあります。
体質の種類
ここからは、体質別の詳細な解説と改善方法をお知らせします。
なお、ご自身の体質が分かっている方は、ご自身の体質の項目へジャンプしてお読みいただいても結構です。
気滞体質
気滞とは、こころとからだを動かす気が充満し停滞している状態です。ストレスが多く、イライラして落ち着かず、あちらこちらで痛みを感じます。さらに痛みなどの場所が変化しやすいことが特徴です。
この体質の方を一言でいうと、「イライラさん」です。
自律神経のバランスが失調して、発汗や体温調整、血圧調整、排便コントロールが乱れ、呼吸器や消化器、循環器などの臓器に影響が出ることがあります。エネルギーとなる気が多く存在するので、症状は強く激しく感じることが多いのが特徴です。
主な症状・病気
気滞体質の方が感じる主な症状は、次のとおりです。
・のどの違和感
・胸苦しさ
・胸やけ
・お腹の張り
・げっぷ
・おなら
・腹痛
・のぼせ
・イライラ
・動悸
・目の充血
・不眠
おすすめの改善方法
気滞体質の方におすすめしたい改善方法は、次のとおりです。
イライラする自分を否定しない
ストレスによりイライラするのは、性格と思っている方も多いと思いますが、漢方では、性格ではなく気の滞りに原因があると考えます。
気とは、脳や筋肉、内臓を働かせる生命エネルギーです。これが不足しているのではなく、多く存在して停滞しているだけですから、上手に気を使いその流れを変えればよいのです。新たに気を作る必要はないのです。気が多くあるからこそ仕事や家事、子育てや介護、人間関係などに一生懸命になれるのです。
まず、イライラする自分を否定したり、嫌にならないでください。頑張っているのですから、むしろ自分を褒めてください。時には自分へご褒美をあげてください。
早めに気分転換を図る
思うようにいかないからストレスを感じイライラするのです。複雑な人間社会です。そんなに簡単に解決することはそうはありません。
まず一時的に考えることを止めましょう。
そのためには、散歩に行くことやお掃除することがお勧めです。手や足を単純に動かすことがポイントです。頭を使わない単純動作を繰り返すことが気分転換には大切です。
自律神経は生命を守るために一生懸命
呼吸や消化、排便、排尿、発汗、血圧などを調整する自律神経は、本来自分の意思とは無関係に活動するようにできています。何かに夢中でも心臓が止まらないのは、自律神経が働いているからです。
その一方で、自律神経の働きが一度乱れると、自分の意思で調整するのが難しいのです。血圧や心拍数、発汗、排尿などを、大脳で意図的に変更を試みても調整することは困難です。
ところが、呼吸は、唯一自分の意思で調整でき、速くも遅くも、浅くも深くもできるのです。
その中でも腹式呼吸は、横隔膜とお腹を大きく動かすことで、肺による呼吸を調整するだけでなく、胃腸や肝臓による消化や、腎臓や膀胱による排尿など自律神経の働き全般を調整することができるのです。
腹式呼吸で自律神経と対話する
感情や理性を司る大脳と自律神経の関係は、親子関係に似ています。大脳が親で、自律神経が子です。厳しくし過ぎても、甘やかし過ぎてもだめです。仲違いしている場合は、じっくりと対話することが大切です。
腹式呼吸が、まさにこの対話する行為です。毎日呼吸を意識的にすることで、大脳から自律神経へ、言葉掛けをするように、対話するのです。
朝起床前と夜就寝前に、仰向けで鼻から息を吸い、一度お腹に息を溜め、ゆっくりと口から吐いてください。胸でなく臍下にある丹田を意識して呼吸してください。
これを10回繰り返します。
毎日継続すれば、自律神経の働きが調和して、心身ともに余裕が生まれ、イライラや緊張しにくい身体になります。
もう少し詳しく気滞体質を知りたいからはこちらを参考にしてください。
気虚体質
気虚とは、こころとからだを動かす気が不足した状態です。
この体質の方を一言でいうと、「ヘロヘロさん」です。
人間が生きるために最も重要なエネルギーである気が不足しています。口数が少なく、声や表情に元気がありません。仕事や家事などですぐにだるさを感じ、ため息が出ます。過労時には動悸や息切れを感じることもあります。
平素もなんとなく手足がだるく、力が入らないことが多いのも特徴です。胃腸を働かせる力も不足して、消化不良や多く食べられないことが多いです。日ごろ元気な人でも、家族の介護や看病などで心身ともに疲れ果てた時には、気虚になることがあります。
主な症状・病気
気虚体質の方が感じる主な症状は、次のとおりです。
・疲れやすい
・食欲不振
・消化不良
・手足のだるさ
・動悸
・息切れ
・風邪を引きやすい
・立ちくらみ
・低血圧
おすすめの改善方法
気虚体質の方に有効な養生方法は、次のとおりです。
無理に食べない
食べ物を消化し、そこから栄養素を取り出すためには、エネルギーが必要です。
特に、肉や魚などのタンパク質や脂肪を消化して栄養分を吸収するには手間がかかり、エネルギーを多く消費します。気が不足しているところに、さらに消化で気を減らしては、元も子もありません。
気虚の方にとって、食べることが辛く苦痛な場合があるのです。1回の食事量を減らして、食事回数を増やし、一度に無理に食べないことがお勧めです。
腹式呼吸で呼吸力と消化力を養う
だるくて運動する意欲がでないかもしれませんが、休息していては体質改善の実現はできません。
まず、できることから始めましょう。起き上がれない程だるい時は、仰向けで腹式呼吸をしましょう。鼻から大きく息を吸って、口からゆっくりと息を吐きます。吸った時にお腹を膨らまして、吐いた時にはお腹を凹まします。これを10回行ないます。
お腹を動かすことで、胃腸の蠕動運動が刺激され、消化吸収を担う胃腸の働きが高まります。深呼吸して横隔膜が大きく動くことで、肺への酸素供給量が増え、肺の気虚を改善します。
多少運動ができる方は、有酸素運動で身体を動かし筋肉を使ってください。身体を動かすことで、胃腸の働きが刺激され、消化吸収力が高まります。日頃運動をしていない方は、散歩から始めてみましょう。日中に体を動かすと、自然に夜はぐっすり眠れるようになります。
適度に動いて十分に休息してください。
冷えを遠ざける
エネルギーとなる気は、多く集まると熱を帯びています。気が少ないと冷えます。冷やすと気は散り、さらに不足します。気が極端に少なくなると、冷えを感じたり、それを言葉にするエネルギーも不足して、冷えの自覚や訴えがない場合があります。
身体の保温に心がけるのはもちろんのこと、胃腸を冷やさないことも重要です。特にお腹を冷やす食べ物である刺身や生野菜、果物、冷たい飲み物などには注意してください。
もう少し詳しく気虚体質を知りたいからはこちらを参考にしてください。
血瘀体質
血瘀とは、こころとからだの老廃物を運ぶ血の流れが悪く、全身または部分的に血が余剰して停滞している状態です。
この体質の方を一言でいうと、「シブシブさん」です。
酸素を運ぶ赤血球や出血を防ぐ血小板は過剰な傾向があり、これによっても血液の粘性が増加して流れづらくなります。動脈や静脈、毛細血管に汚れが沈着して、血管は硬く狭くなり、心臓への負担が大きくなります。
骨盤内の血行が悪くなり古血が停滞すると、子宮や卵巣の働きを阻害します。老廃物の多い古血の影響は、肌や皮膚、歯茎などにも現れます。
主な症状・病気
血瘀体質の方が感じる主な症状は、次のとおりです。
・動脈硬化
・高血圧
・肩こり
・頭痛
・生理痛
・生理不順
・子宮筋腫
・静脈瘤
・しみ
・そばかす
・ニキビ
・歯肉炎
おすすめの改善方法
血瘀体質の方に有効な養生方法は、次のとおりです。
新鮮な食材を選ぶ
血液を汚して流れを悪くする原因は、食べ物が深く関与しています。高血糖や高脂質な状態は、まさに血瘀であり、血液の粘性が高く流れづらく、動脈硬化の原因となります。
過剰な糖分は血液の粘性を増し、毛細血管などを詰まらせる原因となります。中性脂肪は、糖分と同様にエネルギー源として利用されますが、使われずに過剰に血中にあると、血液をドロドロとさせ、さらに悪玉コレステロールを応援して、動脈硬化を促進させます。
コレステロールは、細胞膜の構成成分や、ステロイドホルモンや胆汁の原料ですが、血中では掃除役と汚し役の双方の働きがあります。お掃除役を善玉コレステロールと呼び、血管壁に付着した汚れをきれいにします。
汚し役は悪玉コレステロールと呼び、中性脂肪と一緒に血管に張り付いて徐々に滞積して血管を狭くします。
血瘀による老廃物が停滞し血管や臓器などに沈着した状態を、錆びとして表現することもできます。
ストレスや飲酒、喫煙、食品添加物、紫外線などによって生じる活性酸素によって、血管や皮膚などの細胞を傷つけたり、脂肪を酸化させて血管や内臓に沈着させます。血液をサラサラにするさまざま食品が商品化されていますが、新鮮な採りたての食材を食べることが理想です。
フレッシュな食材は、保存料を含まず、体内に取り込まれて抗酸化作用を発揮します。肉や魚、果物など変色や腐りやすいものほど、抗酸化作用が高いです。
ただ、肉や魚、ナッツ類、揚げ物などに含まれる脂肪酸は、空気にさらされることで酸化していきますので注意が必要です。血瘀の原因を作ります。
切り身にした魚や肉で時間が経っても変色しないものは、注意しましょう。野菜や果物も、ビタミンCやポリフェノールなどが空気で酸化される前に摂取することをお勧めします。
便秘を解消する
血液の汚れの原因となっている老廃物を十分に排泄することが大切です。コレステロールは、胆汁として十二指腸に排泄されますが、多くは小腸で再吸収されます。
そこで、食物繊維はコレステロールと共に脂肪を巻き込んで、小腸で再吸収を阻害して、血中のコレステロールや中性脂肪を減らします。食物繊維の豊富な食べ物は、便秘の解消だけではないのです。
また、便秘による大腸の宿便が、限られた狭い空間である骨盤内で、子宮や膀胱などを圧迫して、生理の働きや排尿を乱します。
便秘の解消に、胃腸の蠕動運動を促進させるお腹の「の」の字のマッサージがお勧めです。手を胃の辺りに置き、そこから「の」の字を書くように軽く押圧しながら動かします。「の」は胃腸の位置関係に相当し、食べた物の流れにそっています。
具体的な配置では、みぞおちと臍の間に胃があります。その下の臍周辺に小腸があり、右下腹から大腸が始まります。右下腹から上へ昇り、右肋骨の下で左に曲がり、横に進みます。左肋骨まで進み下に降りて行きます。
そして、左下腹でS字にカーブして直腸に入り肛門へと繋がっていきます。マッサージする時は胃腸の位置を意識し、冷えや硬さなどを感じながら、温めて揉みほぐすようにしてください。
血虚体質
血虚とは、こころとからだに酸素と栄養分を供給する血が不足した状態です。
この体質の方を一言でいうと、「フラフラさん」です。
心身に酸素と栄養分を供給する血が不足しています。酸素と栄養分を大量に必要とする臓器や器官に支障が生じます。
脳では記憶力の低下や精神疲労を生じ、子宮卵巣では生理痛や月経困難、皮膚や毛髪では艶がなく肌荒れや脱毛が起こります。
主な症状・病気
血虚体質の方が感じる主な症状は、次のとおりです。
・生理痛
・月経過多
・不正出血
・貧血
・疲れ目
・睡眠障害
・不眠
・多夢
・浅い眠り
・精神不安
・心配
・不安
・落ち着かない
・物忘れ
・認知
おすすめの改善方法
血虚体質の方に有効な養生方法は、次のとおりです。
血になる食べ物を摂る
血が足りないのですから、そこを補うには、血になるものを食べることです。ニンジンやヒジキ、レバー、クルミ、黒ごまなどがお勧めです。
一度にたくさんの量を摂る必要はありません。普段の食事の中に、少量ずつ取り入れてみてください。胃腸に負担をかけないように気をつけながら。食事療法に焦りは禁物です。
睡眠と適度な運動が大切
身体を横にして重力から開放することで、筋肉や骨、心臓は休息できます。筋肉や脳から出た老廃物は、肝臓と腎臓へ運ばれ解毒代謝されて、血液を浄化して、疲れを取ります。
きれいになった血液に酸素と栄養分を満たして、血が作られます。この作業は、夜間の睡眠時に行なわれます。このことで、良質な血をつくるのです。そして、夜間に作られた良質な血を、昼間の運動や活動で体中に巡らしましょう。
良質な睡眠を手に入れるためにも、昼間の適度な運動が必要です。
ポジティブに考える
血色の悪い顔や皮膚はかさかさ、疲れやすく、立ちくらみがあるなど、ネガティブな気持ちと心配になりがちですが、そこはがんばりどころです。
食事と睡眠、さらに運動で、血を補い、全身に酸素と栄養分を供給できるようになれば、身体に余裕が生まれ、精神的にも徐々に余裕ができて、不安感は必ずなくなります。
湿痰体質
湿痰とは、こころとからだを潤す水が過剰となり、湿や痰が停滞している状態です。
この体質の方を一言でいうと、「タプタプさん」です。
湿とは、体液やリンパ液、消化液などの液体成分である水が停滞したものです。痰は、消化器や呼吸器に停滞した湿です。これら湿と痰が体内に停滞した状態が湿痰です。
湿が内耳に停滞すると、平衡感覚を阻害します。また、関節や筋肉に湿が停滞すると、運動障害を起こします。
主な症状・病気
湿痰体質の方が感じる主な症状は、次のとおりです。
・水っぽい鼻水
・痰
・咳
・むくみ
・だるさ
・悪心嘔吐
・消化不良
・めまい
・吐き気
・関節痛
・膝痛
・腰痛
・しびれ
・神経痛
・麻痺
おすすめの改善方法
湿痰体質の方に有効な養生方法は、次のとおりです。
水分摂取に注意する
湿痰の方は、小便の回数や尿量が多い傾向にありますが、それ以上に水分を摂取している場合があります。食事を1日3食正しく摂れていれば、1日の水分摂取量は、1~1.5リットルで十分です。
運動や猛暑によって発汗が多い時は、この限りではありませんが、胃腸や腎臓が処理できる水分量を超えると湿痰を助長することになります。特に高齢者では寝る前の無理な水分摂取は、夜間排尿を増やし、不眠や転倒の原因となります。
飲み物は、温かいものがお勧めです。冷たいものは、胃腸や筋肉を冷やして、湿を停滞させます。
冷えは水を停滞させる
寒冷や低気圧、湿気に弱いことが湿痰の特徴です。水は一度冷えると温まりづらく、熱くなると冷めづらい性質があります。湿痰の方には、これと同じような現象が起こります。
真冬の寒冷地や夏の冷房で、強く冷えるとなかなか身体が温まらず、風邪を引いたり、お腹を壊したり、痛みが生じたりします。
真夏には、少し動いただけで大量の汗が出ることがあります。低気圧が近づくと、頭痛や頭重感、めまいが生じ、梅雨時の多湿では、だるさやむくみ、お腹の張り、下痢、関節痛、神経痛などが起こります。これらの症状はいずれも体内に停滞する水分である湿痰が原因です。
そこで、衣服や冷暖房などによって上手に体温調節することが重要です。湿痰の方は、皮膚での温度や湿度の調節が苦手です。
皮膚が直接外気に触れないようにしましょう。
寒さを感じていない場合でも、手足やお腹などを触ってみてください。夏でもスカーフや膝掛けなどで肌を守ってください。睡眠時も薄い布などで手足や首を覆って、冷やさないようにしてください。膝や腰などに痛みがある時は特に注意してください。
身体を動かし水を動かす
適度な運動によって爽やかな汗をかきましょう。定期的な運動により新陳代謝を盛んにし、停滞した水分を動かし、脱水機が洗濯物の水分を外に絞り出すように、湿痰を減らしていきましょう。
関節や筋肉の炎症や痛みが強い時は無理をせずに、痛みがなく動かせる部位だけを動かしましょう。水の動きを活性化させて、汗と小便から余分な水分を排出します。
めまいが強い場合は、寝た状態で足の指を動かすだけでよいです。
陰虚体質
陰虚とは、こころとからだを潤しそれらの働きを円滑にする水が不足して、皮膚や筋肉、神経、内臓などの細胞の働きが低下した状態です。
この体質の方を一言でいうと、「カラカラさん」です。
心身を潤すための水分が不足しています。水は、リンパ液や細胞間液、脳脊髄液、細胞内液など体液全般を意味しますので、皮膚や粘膜だけでなく、脳や脊髄の神経細胞、肝臓など内臓の細胞などを潤しています。
乾燥に弱いので、外気と触れる皮膚やのど、気管などにまず症状が現れます。アトピー性皮膚炎、慢性扁桃腺炎、口内炎、咳喘息や気管支炎などが起こります。また、内臓の潤い不足から臓器が熱を持ちオーバーヒートして、肝炎や膵炎、腎炎、肺炎などが起こります。
こころに潤いがないと精神的な余裕がなくなり、感情的になりやすく、すぐに怒ったり、イライラしたりします。動悸や不眠、めまい、耳鳴りが起こることもあります。
主な症状・病気
陰虚体質の方が感じる主な症状は、次のとおりです。
・のどの渇き
・乾燥肌
・痒み
・声枯れ
・空咳
・ほてり
・熱感
・のぼせ
・めまい
・ドライアイ
・疲れ目
・耳鳴り
・発汗異常
・排尿異常
・不安
・物忘れ
・イライラ
・不眠
・性機能異常
・運動障害
おすすめの改善方法
陰虚体質の方に有効な養生方法は、次のとおりです。
過度な発汗を控える
このタイプは、体中の水が不足しています。度を超えた運動やサウナなどによる発汗は、体液を消耗して乾燥をさらに悪化させます。唐辛子やコショウは、体を温め発汗させる作用がありますので控えましょう。
身体に水分が少なく痩せている方は、暑さ寒さが身にしみる傾向にあります。夏季は上手にエアコンを使い、体温の上昇を防ぎ、発汗を調整しましょう。冬季の乾燥時には、加湿器などで皮膚の乾燥を防ぎましょう。
水分補給と保湿をこまめにしっかりと
陰虚の方はのどが渇きますが、飲むとすぐにトイレに行きたくなる傾向にあります。乾燥して硬くひび割れた地面に、水を流した時と同じ現象です。
乾燥して固まった土は、すぐには水分を吸ってくれません。霧吹きなどで水を細かく分散し放水すれば、固まった土も徐々に水分を吸収します。これと同じように、少しずつこまめに水分を摂取してください。
皮膚の保湿も、クリームやローションなど少量ずつこまめに塗るようにしてください。粘膜や皮膚の細胞の中まで、しっかりと水分が浸透するようにじっくりと時間をかけて潤してください。
また、細胞内へ水分を浸透させるためには、補給する飲み物や保湿ローションなどは、体液に近い状態にイオン濃度を調整したものがお勧めです。
睡眠の質を高める
心に潤いがない陰虚の状態は、精神的に余裕がなく、不安感や焦燥感が起こり、疲れているのに眠れず、熟睡感の少ない夢の多い浅い眠りになる傾向にあります。
睡眠は、眠ろうと思えば思うほど眠れないものです。睡眠の第1の目的は、身体を横にして、筋肉と心臓、骨格などを重力から開放して、身体を休めることにあります。脳を休めることも大切ですが、まずは身体を休めることに集中してください。
6~8時間身体を横にして休めば、たとえ脳が睡眠していなくても、十分に元気になれます。安心して身体を休めてください。
また、腹式呼吸がお勧めです。
夜就寝前に仰向けになって、手足をやや広げ伸ばして、ゆっくりと鼻から吸って、肺に入った空気をお腹に一度溜めて、そしてゆっくりと口から吐きます。徐々に呼吸を深くゆっくりとするようにしてください。呼吸を意識して雑念を払います。これを10回程度繰り返してください。
呼吸がゆったりと落ち着くと、脈拍や血圧も安定して、自律神経の副交感神経が優位になり、睡眠しやすい状態になります。毎日継続すると必ず変化があります。是非実践してみてください。
湿熱体質
湿熱とは、こころとからだを維持成長させる精が過剰にあり、湿と熱が停滞している状態です。
この体質の方を一言でいうと、「ドロドロさん」です。
精であるホルモンが過剰に分泌され、新陳代謝が亢進して、体内に多くの熱が産生され炎症が起こります。その熱や炎症を鎮めるために、体液やリンパ液などの体内の水が呼び込まれます。
それを鎮火できないと、水はさらに集まり停滞して、粘りのある湿となります。熱や炎症の勢いが衰えないと、さらにドロドロとした湿と熱が混ざり合った状態となります。湿熱とは、このように余分な水と熱が体内に停滞した状態です。
主な症状・病気
湿熱体質の方が感じる主な症状は、次のとおりです。
・粘い痰や鼻水
・だるさ
・腹部膨満
・肥満
・便秘
・下痢
・高コレステロール
・中性脂肪
・痛風
・膀胱炎
・結石
・糖尿病
・湿疹
・化膿
・痒み
・関節炎
おすすめの改善方法
湿熱体質の方に有効な養生方法は、次のとおりです。
飲食に注意する
体内に湿と熱が余っていますので、水分の摂り過ぎと食べ過ぎは禁物です。栄養過多は体内に余分な熱を産生します。体内に熱がこもっているので、それを冷ますために、冷たいものが欲しくなります。
しかし、小便や発汗で代謝できる以上の水分を摂取すると、それが湿として停滞して湿熱をさらに悪化させます。食事が3食正常に摂れていれば、1日の水分摂取量は、1~1.5リットルを目安してください。スポーツなどで発汗量が多く小便の量が減っている時は、この限りではありません。
アルコール飲料は、体内に吸収されると血管を拡張して血行を促進させる作用があります。また、熱を産生させて身体を温めます。
湿熱の方は熱が過剰ですから、アルコール類は控え目にしましょう。湿熱による症状を悪化させます。また、アルコールは、食欲などの欲に対する理性的な抑制を解除する作用があります。これが、食べ過ぎや飲み過ぎの原因となります。
欲に負けない
食欲を調整する摂食中枢は視床下部にあり、ここは自律神経の中枢でもあります。さらに視床下部に隣接して脳下垂体があり、ここはホルモンの中枢です。
よって、ホルモンと自律神経の働きが乱れると、摂食中枢も不安定になり、過食傾向になります。胃から分泌される食欲ホルモンであるレプチンやグレリンの乱れも摂食障害を起こす可能性があります。規則正しい生活で、自律神経の働きを乱さないことは、摂食中枢を安定させて、適切な食事量を維持するために大切です。
湿熱の傾向があると、食欲など欲に負けやすくなります。美味しそうなものを見たり、においを嗅いだりすると、食欲を抑えらなくなります。
1回の食事量を食べる前にしっかりと決めて、それ以上の食べ物を目の前や手の届くところに置かないようにしましょう。食べ始めてから、視覚や嗅覚による食欲刺激を抑えることは困難です。
有酸素運動で完全燃焼させる
体内に余剰している脂肪や水分を、適切な運動で消費しましょう。
湿熱の状態は、身体が重くだるく感じる傾向があります。運動意欲が湧かないのは、湿熱体質にも原因があるのです。まず、臥位や座位での関節の屈伸から始めましょう。肩や肘、股関節や膝を大きく曲げ伸ばして、リンパ液と静脈血の流れを促進します。
大きな関節にはリンパ節が集まっており、これらの関節運動はリンパ節を刺激してリンパ液と血液を流して、むくみやだるさを解消します。気持ちと身体が多少軽く感じてきたところで、ウォーキングや軽いジョギングなど有酸素系の運動をスタートしましょう。
20~30分でよいので、毎日継続できる強度の運動量にしましょう。
陽虚体質
陽虚体質とは、こころとからだを維持成長させる原動力となる精が不足して、身体の動きや精神活動が低下した状態です。
この体質の方を一言でいうと、「ガクガクさん」です。
身体および精神を成長させ、さらに生命活動を維持させるためのホルモンの働きである精が不足しています。ホルモンバランスの乱れではなく、分泌腺そのものの働きが低下し、ホルモンの分泌量が減少する状態が陽虚です。
新陳代謝が低下し、体の芯まで全身の冷えがあり、生命機能も低下します。未熟児で生まれた方や生まれつき虚弱な方、要介護状態の高齢者に多いです。日ごろ元気な人でも、無理を重ねた場合や、心身への極度なストレスやショックを受けた場合も、陽虚になることがあります。
小人症や甲状腺機能低下症など病的なものもありますが、閉経や前立腺肥大など加齢による要因もあります。
主な症状・病気
陽虚体質の方が感じる主な症状は、次のとおりです。
・身体の芯まで冷える
・低体温
・無月経
・不妊
・インポテンツ
・排尿異常
・加齢よる腰曲がり
・未消化の下痢
・息切れ
おすすめの改善方法
陽虚体質の方に有効な養生方法は、次のとおりです。
身体の熱を逃がさない
大事な自分の熱を外に漏らさないようにしましょう。特に服装は大事です。首周りや足首は、熱が逃げやすい場所です。
夏場は冷房にも注意してください。また、腰にカイロを貼ることはお勧めです。さらに、体を冷やす食べ物は控えましょう。生ものでなく煮物など、温かい物を食べましょう。
足を動かす
生まれつきの虚弱体質ではありますが、足を動かすことによって、新陳代謝を高めることができます。
体力や体調に合わせて、足踏みから散歩、ジョギングまで、足を使う運動が、心臓の働きを助け、血流を増加させ身体を温めます。さらに、胃腸の蠕動運動を刺激して消化吸収力を高めます。
少しずつで良いですから、継続することが大切です。日々運動することによって、筋肉や骨格を刺激して、ホルモンの働きを高めることができます。
休息を上手に取る
適度の運動が必要ですが、体調や天候に合わせて無理をしないでください。こまめに休息を取って、体力を消耗させないようにしてください。特に目の使い過ぎに注意してください。
眼精疲労は、脳下垂体の働きを抑制することがあります。
精神的にも疲れを溜め込まない
子育てや家族介護などで、自分のペースで動けない時には、無理をせざるを得ないこともあります。気力で体を引っ張っている時は、自律神経の働きがまず追い込まれ、その状態が続くと、次にホルモンの働きが追い込まれます。このような状態がホルモンのバランスを乱し、それの持続が陽虚をもたらします。
上手に気分転換を図り、心身ともに疲れを溜め込まないようにしましょう。時には旅行などワクワクするような楽しいことを計画しましょう。
※私が執筆した本です。(Amazonへ飛びます。)→体質で決まる漢方と養生
まとめ
体質とは、生まれながらに持っている又は生活習慣から起こる体の性質を指します。生命維持に必要な成分である「気・血・水・精」の過不足やバランス、臓器の状態などを考慮して体質を判断します。
体質は、次の8つに分類されます。
- 気滞(きたい)
- 気虚(ききょ)
- 血瘀(けつお)
- 血虚(けっきょ)
- 湿痰(しったん)
- 陰虚(いんきょ)
- 湿熱(しつねつ)
- 陽虚(ようきょ)
東洋医学(漢方)では、体質判定を第一優先順位に考えます。目に見え感じる症状だけでなく、その人の本来持っている体質を見極め改善していくことが、効率的な健康対策だからです。
ぜひこれを機会に、あなたも体質判定をしてご自身の健康ライフの強い味方にしてみてください。